理事長挨拶

第18回SJF学会(東京大会)に際して

SJF学会 理事長 宇都宮 初夫

utsunomiya  第18回SJF学会のテーマを「世界に羽ばたけSJF “to make SJF the global standard”」としたが,これは当学会の夢であり希望を掲げたものである.SJFはこれまでわが国の中で、Disease及びImpairmentに対する治療技術として存在してきた.これまでの技術が及ぼす治療効果を医学の中で位置づけしていくと,国の内外で比較することが出来ないほど高い効果をあげている技術であることが見えてきたのである.

まずは有痛性疾患に対する治療効果である.これは他のどの治療技術にも見られなかった成果を示すことができるようになってきた.このことは治療を通して,関連痛の存在を証明したことによる.関連痛とは,ある関節運動に伴い出現している痛みが,当該関節とは遠く離れた関節の治療によって消失することから,原因が痛みを訴える関節には無いというものである.痛みはそもそも実態のない感覚自体であるから,「痛みの治療」という用語はあり得ない.しかし正常な状態では痛みは生じない.痛みを生じる原因があるからこそ,主観的証拠として痛みが出現するのである.Pain,-acheの語源をたどると「警告」という意味があるようである.したがって痛みを感覚から無くすると,異常の部位・原因が不明となり,「危険」が増すことになる.痛みではなく「痛みの原因」を発見して,これを治療することによって痛みが消失すれば,原因が証明されたことになるのである.内科・外科の医師はこの「確定診断」のために,麻酔注射を使用するのである.これを「治療的診断法」というのであり,痛みの原因を確定するために必須の条件となる.麻酔注射以外の方法としては,即効性のある治療法のみが使用されうるのであり,ここにおいてSJFは有用性を発揮するのである.SJF治療後即筋スパズムが消失することから,関節原生の痛みが証明できる.治療の結果各関節からの一定の関連痛領域が判明した.しかもこの領域は痛みのみならず,腫れ,発赤,筋のスパズム・弱化なども含まれており,「関連痛」というより「関連症候領域」と呼ぶことができる.医学的にはこのように各種症候の原因を確定できる技術が,SJFの中で最も意義のあるものであろう.

次に関節機能の問題解決としては,「軟部組織の拘縮」の治療を可能とし,効果を上げることができるようになった.これは関節内での潤滑機構を利用した新しい技術を開発したことによる.筋・腱・関節包・靭帯などの軟部組織は、起始と停止部があり,これを長くするために関節の動きを利用している.関節面の摩擦が強いとこの関節の動きを利用できない.したがって軟部組織を長くするためにこれまでにはない治療技術が必要であった.生物摩擦学(Biotribology)で関節面が近くなればこの摩擦は弱くなることが証明されている.そこで,動かす関節面の摩擦を少なくするために,関節面を近づけて動かすという技術を治療に取り入れたのである.これまでの基本的な考え方としては,関節面の間を広くして物理的に動きやすくして動かすと動きやすいと想像していた.ところが関節面が広がると,関節内圧が高くなることで関節面同士の引き合う力が強くなり,関節の動きはかえって重くなるのである.五十肩の治療として長い間使用されてきた振子運動が功を奏さなかった理由はここにあったのである.脛骨骨折の後、骨髄炎を発症し,15年間脛骨大腿関節の屈曲拘縮を来した患者にこの技術を適用した結果,3か月後に正座ができるまでになったのである.その他股関節、窩上腕関節の靭帯・関節包など関節構成体である軟部組織を長くするためには、純粋軸回転を利用すると効果的となる.軟部組織は伸張(Stretch)すると,後で短縮することになるのである.これに対して強制他動的な伸張ではなく,長くなる分だけ引っ張るという延長(lengthening)技術を使用すると,短縮することなく軟部組織の長さが維持できることが判明した.これらの結果,SJFで使用している関節機能の改善技術は他に例のない効果を生み出してきたのである.その他関節機能に関しては,運動に際して関節内の摩擦抵抗が強いと動きが制限されることになる.関節内では関節面の通り路(軌道track)があり,この路を逸脱すれば,その関節運動は硬くなる.加えてこの状態が続くと前述の痛みを招来することになる.そこで各関節に存在する軌道の修正と,関節の余裕である「遊び」を与える技術の使用で,痛みの消失及び関節運動を軽くすることに成功したのである.このことは患者にとって,実用性のある関節運動として重要な因子である.

最後に筋の機能に関する技術である.関節包に存在する関節受容器に刺激を与えることで,治療後即筋の収縮活性化が可能となった.収縮活性化が起こると,筋の張力が増大され,筋力は即座に強く表れてくる.同時に拮抗筋の弱化も起こってくる.この結果は脳卒中片麻痺患者の四肢の関節にそのままの形で使用される.またこの技術の強さと,動かす範囲を半分位にして使用すると,拮抗筋には影響を及ぼさず主動作筋の強化のみが得られる.この技術はパーキンソン病患者に使用される.治療後筋の収縮の初動が早くなることから動作が容易になる.これまでの治療技術との相違は与える刺激の早さで,ゆっくり抵抗をかけたり運動を止めて負荷をかけたりするのではない.その速さは1/100秒である.この刺激は関節包に存在する関節受容器のタイプⅡに適刺激となり,脊髄を通り越して脳にまで到達することが実験の結果判明した.正常の筋に対してもこの技術(quick inverse sliding:q.i.s.)を使用すると,直後に筋力は強くなる.このことから従来の筋力テストでは「真の筋力」は発揮できずq.i.s.後に検査すべきであることが分かった.筋の機能に関しては,SJFの技術は筋線維タイプ別(typeⅠ,typeⅡなど),あるいは筋線維別(上腕二頭筋ではなく長頭に対してなど)にと,個々の筋線維に対する治療が可能となっている.この技術を呼吸筋の主動作筋である横隔膜に施術すると,即刻呼吸が容易となることから,これまでの呼吸障害に対するPTのアプローチを,大きく効果的に変更することが可能である.

スポンサーリンク

以上の様なSJF技術の発展が,どの様な経過を経て成立したのかについて基調講演で述べたい.またシンポジウムではアメリカ,カナダ,オーストラリアで働くPTあるいはOTに参加いただき,各国における治療の状況について述べていただき,その後患者治療の実際について討議することを予定している.そうすることでSJFの世界における位置づけや,PT・OTとして取り掛かる今後の治療技術のあり方,方向性について考えていきたいと思う.

お問い合わせはこちら

  • Facebook
  • Hatena
  • twitter
  • Google+
  • Facebook ページ
  • 広 告
    PAGETOP
    Copyright © 関節ファシリテーション(SJF)学会 All Rights Reserved.
    Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.